「精霊の守り人」や「獣の奏者」で有名な著者のデビュー作。面白いのは鉄板だろうと思い、購入しました。まさかデビュー作がSFだったとは驚きです。鉱物資源めあての惑星開拓によって、絶滅させられた先住異星人の歴史が、事実とはゆがめられている。大量殺人もかくしたまま。移民局が隠そうとして監視下においていた異星人との混血を誘拐し、関係者を事故死にみせかける準備をする。精霊のもたらす超能力は、攻撃するような大きな力がないことや、移民局に最初は誰もさからえず絶望しているところなど、面白いなあと思うポイントがたくさんあって、短い(300p弱)のにぎっしりしたぜいたくな内容です。
ヨーロッパからアングロサクソンが、東へ東へと開拓していく道程には、先住民がローラーでつぶされるかのように滅ぼされていきますが、そんな大虐殺の歴史の上に現在があるわけです。黄色人種に生まれて、いま蹂躙されていない奇跡に、わたしは感謝するしかありません。先住異星人ロシュナールのエピソードが語られてゆくにつれて、宇宙の未来的な描写が、だんだんと、なにか懐かしいような古代の神話を感じさせていきます。取り戻せない大事な文化を失って、怒りと悲しみをどう癒せばいいんだろうと、ずっと考えていました。親も殺され、後世へ望みを託すこととして自分の赤ちゃんを里子に出し混血という最終手段に出る、もう一人の主人公(だと私は勝手に思っている)ドンに、がんばれと読みながら応援する気持ちと、やっと会えた孫とすら気持ちが通じない寂しさに、打ちのめされてしまいます。善意の言葉がなんなんでしょう。虐殺者の一族が、先住民にかける優しい言葉は卑怯とさえ思えました。
読んだあとは、ちょっと切ない感じが残る重厚なテーマですが、読みやすい文体で一気に読めます。まちがいなくおすすめです。
価格:1,296円 |
コメント