読みました「この世の春(上)」、徹夜した!

この世の春、上、表紙 読んだもの

この世の春、上、表紙2

読み始めてから、どこでページを閉じたらいいのか、わからないくらい面白かったです。本屋さんで購入する時に、カバーをつけてもらったので、しばらく帯のマークに気づきませんでした。

さすがの30周年記念作品

著者の宮部みゆきさん、30周年なんですね!

いや、30年て、意外に短いと思いました。宮部作品は見かけると必ず購入する、私にとっての鉄板作家(誰にとっても鉄板だと思うけど!)。「まだ30年?」とも思いますし、作品はいつも面白くて新鮮だから、「もう30年もファンだったの?」という感じもあります。

この世の春、上、帯

最初のシーンから、もう映画のクライマックスかと思いました。逃げてくる子連れの女性は、主人公の「多紀」の家を頼って来るんです。

結果として子供だけは命が助かり、女性は連れ戻されて処刑されます。助けられなかったという、やりきれない思いで多紀が泣くのを共感を持って読みました。しかし、もっとすごい展開が続くのですよ。

上巻の最初の章が「押込(おしこめ)」というのですが、私はてっきり強盗かと思っていました。助けを求めてきた、子連れの女性(なんだけど)は、実は強盗団の手先なんだろうか、と思って読み進めていると、違うんですね。主であるはずの殿様のことを、家来が無理やり監禁することなんだそうです。

表紙見返しの人物相関図は必見

上・下巻を読み終わって、カバーの見返しに登場人物の相関図があるのに気づきました。わかりやすい!そして無駄がない!

読んでいる最中は、私はカバーをはずす派ですので、表紙に有用な情報があっても気づかないことが多いです。今回も、後から気づきました。これから読むなら、ぜひ相関図を見逃さないで欲しいです。

多紀の周囲には、魅力的な男性が登場します。どの人たちも、はっきり言葉にださないのに優しい気持ちに溢れている、古き良き日本を思わせる男性です。古い日本なんて、本当には知らないのに、「こんな感じの世の中だったんだろうな」と憧れます。

相関図、表紙見返し

時代ものであり、政治ものであり、心理ものであり、超能力ものであり、ミステリーである

小説って贅沢なエンターテイメントなんだな、と思います。上巻を読み終わった時、押し込められた重興の内面を解きほぐすことがゴールかと思っていました。「ざまをみろ」の言葉に、ぞっとしましたが、下巻を読み終えた時、この言葉は違う印象に変わります。

サイコミステリーではあるのでしょうが、それだけじゃない。

藩を巡る陰謀については、上・下巻読み終えても謎が残るあたりは、政治色の濃い内容でした。姿を見せないけれども、新しい藩主がきっと黒幕でしょうし、シリーズ化されたらいいのにな、と思います。

不思議な技能をもつ巫女の村についても語られますが、その超能力が出てくる訳ではないです。そんな控えめなところも、かえって暗くて怖く感じました。

もっともエキサイティングな戦闘は上巻にある

多紀のいとこ、半十郎は「麒麟児」とも呼ばれる槍の名手で、敵の忍びと戦います。小説であるのを忘れるような、手に汗握る戦闘でした。

半十郎は、強いだけでなく、まっすぐな性格なので、登場するたびにちょっと空気が爽やかになるんですよ。とても素敵なキャラでした。

敵の忍びは、重興を幽閉する館の周辺を知り尽くしているので、なかなか捕まりません。

女性の馬喰、しげもかっこいい

重興の愛馬、飛足を五香苑(幽閉してる館)に連れてくるのは、女性の優秀な馬喰、しげ。北見藩では特別に馬を大切にしているし、重興は乗馬が得意であったりと、馬のエピソードが多い本作で、女馬喰のしげは、馬のプロフェッショナルとして存在感がありました。

馬の知識と経験で、森に潜む忍びに対抗します。しげは、馬に好かれる重興を気に入っており、「馬が嫌う」人間の本性を見抜く役目だったのかな、と思います。

日本からインドへ持って行った本

この本はインドで読みました。日本にいるときは、我慢して読まずに取っておいたのです。せっかくなので、時間をかけて読もうと思っていたのに、結局、一気読みしてしまいました。これから読む方は、2冊一緒に用意しておいた方がいいと思います。

日本から遠く離れた暑い国で、この本を開くと、そこは五香苑なわけです。重興が孤独に戦う、座敷牢です。誰にも助けを求められない状況が長く続いても、重興は戦い、五香苑のスタッフは、彼を守るために立ち上がります。

上巻へ続く!