面白いんだけど、どっしり重い内容。何が面白いって、リアルな怖さですよ。
短編3つ、長めの短編1つ
オカルトというよりは、女性そのものの恐ろしさ、気持ち悪さに背筋がゾッとしました。「泣きぼくろ」もそうだし、「姑の墓」もです。不思議な怖いストーリーを堪能しつつも、最後まで読むと「ストンと納得できるところこそが不思議」と気づきます。
長めの短編は「黒武御神火御殿」で、神隠し先で滞在した屋敷の謎が明かされる話でありながら、囚われた人たちの過去の罪とは一体なんなのか明らかにされてゆくことの方に、より興味がそそられていきました。おとなしい謎解きだけではないんです。大作映画のようにダイナミック。語り手と聞き手が白黒の間で二人きりで語り聞き捨てる、というミニマムなシチュエーションのはずなのに、クライマックスでは、ハリウッド映画でも使わない爆音が聞こえてきそうでした。
嫁に行ったおちかが、チラッと登場するのもテンションが上がりました。
同行二人に納得した部分
家族を立て続けに亡くした飛脚がかわいそうで、読んでいて胸が詰まってしまって、途中で休憩。この飛脚がどうやって立ち直れるんだろう、と思いながらなんとか読んでいきました。
一定の距離を保ちながらくっついてくる、こののっぺらぼうは、最初かなり怖かったのですが、すぐに感じ方も変わります。飛脚(亀一という)はのっぺらぼうに取り憑かれてしまったのですが、のっぺらぼうに自分を重ねていくところが、すごく自然。
理不尽な悲しみに、亀一が向き合うためには、自分のことだけを考えていたのではダメだったんですね。考えさせられる。。。