うずら大名
畑中恵著
しゃばけシリーズでおなじみの畑中恵作、今度はイケメン大名がトラブルを解決します。涼やかな顔で大名という身分もありながら、ふてぶてしいタフガイな主人公がかっこいい。
可愛いうずらを巾着に入れて持ち歩いていたり、若き日の道場仲間を身分を超えて助けたり、派手で気持ちのいいお話ですが、読み終えてみると、犯人が他人の人生に羨んで間違いを犯した切ない感じが残ります。人生はどう転ぶのかわからない、大名になったって、幸せとは限らない。そう感じました。
「なぜ大名になど、なりたいのか」
と、登場している大名は言いました。3人の大名が。
江戸時代も後半になると、財力を持つのは大商人や豪農で、武士は体面を保つためにいつも資金繰りに困るようになります。
農民だって名主になれば、その富に対して村人に責任がのしかかります。
次男三男の集まりである剣術道場は、養子先が見つからないものばかりで、身分が関係ない良さがあったものの、不意にラッキーで大名になったり、豪農として名主をついだりした者が出ると、関係が一変する。いや〜な流れの話です。
最後に、泣き虫の名主が男泣きに泣くところで、ほんの少し救われた気がしました。