しゃばけシリーズです。いつものひらがなのタイトルです。作品によっては、あとから内容を思い出しにくいですが、これはシンプルで印象的です。
妖になりたい、人になりたい、親になりたい、猫になりたい。
いままで出演した神様が集まられて若だんなに、生まれ変わったら何になりたいか、と尋ねます。
なりたい
畠中恵 著
生まれ変わるのは人間とは限らない、という世界観ですから、虫になるとすぐに死んで次に転生します。次々にうまれかわりつつ、猫になった手ぬぐいの染物屋の話では、3人の染物屋が出てきます。ひとりは生まれ変わって猫になっても、またひとりは病気が進行して命が絶えようとしていても、残された家族を心配しています。問題が解決しても、死が待っていることはかわりません。死んだら、何に生まれ変わっても、必ず見つけるよ。いつか猫になったら、きっと猫又に育てるよ、と声をかけるところは、本当にせつなくてなんとも言えません。
若だんなは病弱なだけでなく、妖でないので、いつかは長崎屋の妖たちと別れなければなりません。にいやたちも覚悟してるのでしょう。生まれ変わった若だんなと妖たちの本もあります。いつも感じる切なさの行き場があったようなおはなしになっています。別離は、それが終わりということではないんだよ、と。若だんなが生まれ変わることには、こうして神様がからんでいらしたのか、と広がりのある終わり方です。しゃばけシリーズのファンなら、はずせない1冊。また、関連した作品の登場人物が頻出しているため、この1冊をしゃばけシリーズのはじめの1冊にするのは、もったいないです。できればいままでの作品をおさらいしてもいいくらいです。
せつない感じで終わりますが、「あの話は、こうつながるのか」と、すとんと落ちるように納得できました。この若だんなと妖たちの避けられない別離を、どう受け止めたらいいのかな、とせつない気持ちでいた
しゃばけシリーズファンのための、心の準備のための本作だと思います。