読みました「(Outlander 20)炎の山稜を越えて 4」

炎の山稜を越えて4 OUTLANDER
outlander20,炎の山稜を越えて4

4冊で構成される「炎の山稜を越えて」もフィナーレ(まだOUTLANDERは続きます)。20巻も読んだ小説は、初めてです。しかも、本作は今まででもっとも盛りだくさんの印象。これでもか、これでもかとクライマックスが続きます。20冊目で、このテンションです。

クレアとジェイミーも孫ができました。OUTLANDERは、話が大きく展開するときは、戦争のときと子どもが生まれるときです。タイムスリップものでもありますが、クレアが時を旅したのはたった3回。小説20冊ぶん、ここまでで、1往復半だけです。

炎の山稜を越えて4、表紙

炎の山稜を越えて 4
ダイアナ・ガバルドン著 加藤洋子訳

OUTLANDERシリーズ20冊目「炎の山稜を越えて 4」。原題は「A BREATH OF SNOW AND ASHES」。アメリカ史で有名な人物や、文書のやりとりを、クレアと一緒に目の当たりにできたような、歴史好きにはたまらない部分も。「ジェイミーの墓標」でのカローデンは読んでいても絶望的であり、荒涼としたしたムーアに滅びていったクランが忘れられません。しかし、本書は独立戦争が終わったところから、さらに息もつかせぬ展開になります。またもクレアが逮捕・処刑されそうなショッキングな展開。きりぬけたあとも後半からスピードアップして、事件が続きます。「え、この人が!?」という予想もできなかった真犯人が出てきます。

フレイザーズ・リッジとラリーブロッホ

クレアとジェイミーは、アメリカ大陸で自分たちの居場所を必死に作り上げてきました。フレイザーズ・リッジは大きくなり、仲間の人生と家族も一緒に受け入れてきたのに、それがガラガラと崩れます。ラリーブロッホでは、お尋ね者のジェイミーを売るような人間はいませんでしたから、リッジの住人がことさらに恩知らずでいいかげんに感じるのかもしれません。ぬれぎぬを着せられたジェイミーとクレアをブラウン(よりによってブラウン!)に引き渡すリッジの大勢の住人に嫌悪感がわきました。

炎の山稜を越えて 4、とびら

フランス国王の愛人の話題が出た!

リッジの住人のなかで、ジェイミーの無実を信じる少数派の女性が集まり、ガールズトークしたりします。ほほえましい。そこでフランス国王の愛人の話題がでました。ドラマOUTLANDERのシーズン2、初めてヴェルサイユに行った、あの場面です。映像になっても、クレアの真っ赤なドレスがほんとに素敵でした。映像で見るとさらに刺激的だった国王の愛人の姿が思い出されました。

フランスの金塊のゆくえ

「ジェイミーの墓標」を読んだあたりでは、フランス国王はボニー・プリンス・チャーリーと親戚なのに、ジャコバイトになかなか資金を援助しなかったな、と思っていました。が、のちにフランス王室の紋章が入った金塊の存在がわかり、本書でやっと発見されます。それもすごいところから!すごいときに!

この金塊と同様、リヴァー・ランのぞっとする人間関係は長い年月をかけて複雑にからみあっていました。この点は本書で、すべてが明らかになりました。ジョカスタと執事のユリシーズの関係は想像していましたが、元夫のヘクターからの因縁にも驚きました。

ボネットの裏にフォーブズが

やっと、ボネットが逮捕されます。クレアもブリアナも、あまりにひどい試練がふりかかるので、読んでいてとても辛かったです。ボネットの裏で糸をひいていたのは、実はジェラルド・フォーブズだとわかりました。許せないです。フォーブズのことは作者も許せなかったようです。フォーブズはヤング・イアンに耳を落とされました。やるときはやる男、イアンです。

クレアを助けてくれた、トム・クリスティー

無実の殺人罪で捕まったクレアを、トム・クリスティーは命をなげうって助けます。罪をかぶりました。実は真犯人のこともかばったわけですが、クレアに罪を着せたままにはできなかったのです。この切ないトムのことは、何度考えても胸がつまります。おそらく、トムがどんな努力をしてきても運命はかえられなかったと思うからです。

魔女は誰だったのか。ブリアナが見つけた呪術のあと

トムの娘、マルヴァは魔女だと判明。マルヴァの母も魔女(子供たちの目の前で処刑された)でした。トムの運命は結婚したときから決まってしまったのだと思います。ブリアナが見つけた呪術はマルヴァのものですが、こうした呪術にパワーがあるというよりも、人を殺すほどの悪意がある証拠なんですね。

マルヴァの本性は、いろんな人が看破しています。トムやロジャー、イアンもそうです。しかし、そのなかでクレアだけがきづきません。クレアにとってはかわいい弟子だったからです。そういえばクレアはゲイリスにも好かれました。なぜか悪意のある魔女に好かれるんですね、クレアは。

マルヴァはクレアを殺そうとしたのに、「やっぱりクレアを愛している、打ち明けるつもりだ」と言い出します。自分の嘘に耐えられなくなったきっかけは、ロジャーではないかと思っています。マルヴァが家族に暴力をふるわれるのを、ロジャーが助けました。マルヴァがジェイミーに罪を着せたことを知っていても、ロジャーは助けてくれたわけです。惨事はこの直後でした。

トムの運命と同様、マルヴァの運命もどうしようもないです。マルヴァの性分が悪いものなのは、マルヴァのせいだったのかな。

クレアたち以外の時の旅人について

インディアンを救うために時を越えて来たはずのドナーは、ならずものとなっていました。必死に20世紀に帰ろうとしますが、同情できません。最も嫌いなタイプです。クレアとジェイミーが宝石を持っていると信じて強奪にきますが、かえりうちにあうわけです。

これで、登場する可能性のある時の旅人は、あと3人。「ジェレミー」「アタ」「レーモンド」。

1「ドナー」ウェンディゴ・ドナー。1776年にやってきた。本書で死亡。
2「ボブ」カワウソの歯のこと。すでに死亡。
3「ジェレミー」
4「アタ」
5「ジョジョ」死亡を確認。
6「レーモンド」指南役。マスター・レーモンではないか?時を自由に越えている?
7「ゲイリス」ロジャーの先祖。魔女。死亡。

時を越えていったのは、クレアでなくブリアナたち

ジェイミーは、クレアを逃がすことを考えていましたが(だから黒ダイヤをぎりぎりまで売らなかった)、結局クレアでなく、ブリアナたちを20世紀に帰します。いつも別れの理由は、「赤ちゃんを守るため」。すべてに納得できる、これ以上の理由はないと思いました。切ないけれども、未来でブリアナたちがラリーブロッホに戻るシーンに、安心しました。新聞の死亡記事についても、誤報。クレアたちは生き延びています。それにしても、ブリアナとアマンダ(第2子)、ロジャーや、ジェミーが一気にいなくなったクレアは可哀想でした。

使った宝石

  1. ひとつは、ジェイミーの父ブライアンのカボションカットのルビーの指輪。
  2. ふたつ目は、クレアがインディアンにもらったサファイアの原石。
  3. みっつ目は、イアンがフォーブズからうばったファセットカットの金緑石(でかしたイアン!)。キャッツアイで有名なクリソベリルのことでしょうか。
  4. よっつ目は、なんとジョン・グレイから。カローデンで亡くなったジョンの恋人から贈られた大切なファセットカットのサファイアの指輪。

ジョン・グレイは、カローデンで恋人を亡くしてから、ずっとその指輪をしていました。また、アーツミュアでジェイミーから取り上げた見事なサファイアのことも話題に出ました。ジェイミーはこのサファイアを返してくれれば、という気持ちだったのでしょう。宝石をおねだりするわけではなく。ジェイミーはもうそのときのサファイアはないと思っていますが、実はジョン・グレイは25年間もっていて「今もチョッキのポケットに入っている。」のでした。ほんとにジョン・グレイは素敵。サファイアをまだ持っている事はジェイミーに言わないんです。

宝石は傷のないものが良かった

かつてゲイリスは、宝石は傷のないものがのぞましいと言ってました。また、カットしていない原石は、時を越えたときにくだけてしまったとドナーは言ってます。

ブライアンの指輪はカボションカットなので、透明度の高い高価なルビーだったかも。キラキラしたでしょうね。ファセットカットのサファイアは、ころんと丸くカットされるので、濃い青い色がよく見えるはず。ジョン・グレイの色白の美しい指にずっと鎮座していたのでしょう。

【追記】ブライアンの指輪はころんと丸く、ジョン・グレイの指輪は切子面のあるキラキラしたものです。逆でした。【追記ここまで】

クレアは(知らなかったから)宝石を持たずに時を旅しました。必要というわけではないのですが、身を守ってくれるのでしょう。

時を越えて、未来へも行ける可能性が

時を越える才能があっても、成功する人と失敗して死亡する人がいるのはなぜか。

クレアは、時を越える旅人が、過去にいったり戻ったり、また過去で亡くなったり子どもが産まれたりすることも、バランスをとっているのではないか、と考えています。定員制なのでしょうか?また、過去にも行けるのだから、未来に行く人もいるかもしれない、とも考察しています。

過去に渡ったクレアのぶん、誰かが未来へいったのでしょうか。

過去から手紙が届く

やりきれない辛い事件が続きました。いくつもの謎がとけ、ボネットを倒しても、かなり信頼していた人物に裏切られ、母屋は焼け落ち、フレイザーズ・リッジはぼろぼろです。裏切りものについては、私はまったく想像もできませんでした。親切で忠実な顔して、おそろしい。驚きのあまり、前巻をもう一度読み直したくらいです。

でも、ジェイミーとクレアはそこを生き延びて、ブリアナに手紙を書きました。タイムカプセルです。用紙はブリアナが手作りしていた、花をすきこんだ、あの紙。どうも4人とも無事に戻れたようです。切ないけれども、未来でブリアナたちがラリーブロッホに戻るシーンに、安心しました。エピローグがふたつ、10ページ。暗い空気を払拭する最後の10ページです。ブリアナが思わず漏らす「ママ」の台詞に泣けました。

手紙には何と書いてあったのでしょう。

次巻は「遥かなる時のこだま 1」です。

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