アウトランダーの原作「時の彼方の再会」で、クレアと再会したジェイミーが、なんとよりによってリアリーと再婚していました。精神的にぼろぼろなジェイミーにつけこんだのが、理由のひとつだと前記事で考察しました(前記事参照)。また、リアリーのせっぱつまった状況と、ジェニーの後押しがあったことも、「ありえない再婚」の理由としてあげられます。
ジェイミーは、リアリーの悪行を知らなかった
原作でジェイミーがリアリーの悪行を知るのは、OUTLANDERシリーズ16冊目である「燃ゆる十字架のもとに 4」です(別記事:読みました「(Outlander 16)燃ゆる十字架のもとに 4」)。
クレインズミュアの魔女裁判で、クレアは殺されるところでしたが、リアリーの策略だったことをジェイミーは知りませんでした。リアリーは、クレアに「お前が焼かれた灰の上で踊ってやる」と言いはなち、勝ち誇っていたのが忘れられません。魔女といえばゲイリスですが、悪らつさにかけてはリアリーがダントツです。
「燃ゆる十字架のもとに 4」では、クレアがリアリーに殺されそうになったことを話します。言ってなかったっけー?そういえば、いそがしかったもんねーという感じです。そこで言ったジェイミーの台詞が、このようなものです。
「いや、まったく知らなかったーーなんてことだ、サセナッフ、きみにそんなことをしたと知っていたら、おれが彼女と結婚したと思うか!」(「燃ゆる十字架のもとに 4」より)
遅いでしょう、気づくのが!「心の底から驚いた様子で」リアリーへの嫌悪感をあらわにしました。クレアを殺そうと画策したことを、もしジェイミーが知っていたら、まずリアリーとの再婚はありません。ドラマではどうやってリアリーとジェイミーが再婚するのでしょうか。
リアリーは娘ふたりをかかえた未亡人。生活に困っていたリアリーに同情したか?
再婚の相手にリアリーを選んだ理由を、ジェイミーはクレアにこう説明しました。
「それで…彼女は子供を二人抱えた未亡人だ。男を必要としていた。(以下略、「時の彼方の再会 2」より)」
リアリーの生活に困った状況に、ジェイミーは同情したのだと思われます。もちろん、リアリーとの結婚生活は上手く行かずに別居。以降えんえんとリアリーに生活費を仕送りする事になります。
リアリーはべつにジェイミーひとすじじゃなかったわけです。2回の結婚をして2回とも夫と死別しており、二人の娘は二人目の夫との子供です。ジェイミーの子供ではありません。
ここで重要なのは、「かわいそう」なことです。同情をさそって結婚に持ち込む。よくある手で悔しいのですが、リアリティがあるなあ、と納得してしまいました。ジェイミーはリアリーに同情したというのが、理由のひとつだと思います。
さらにジェニーにうながされた(これが決定打)
ジェニーは、ジェイミーに再婚をしつこく促します。ジェイミーを心配するにしても、なぜリアリーなのか。
リアリーの魔性はジェニーの知るところではありません。ジェイミーに再婚してほしいと願っていたので、候補は幾人もいました。リアリーはそのなかの一人でした。
しかし、まったく無作為に候補を選んでいた訳ではありません。ジェニーはラリー・ブロッホに根付いた女性を選んでいたことをクレアに明かします。
ジェイミーはラリー・ブロッホでは、すでに領主ではなく「よそもの」のようでした。また、いつ離れていくかもわかりません。ラリー・ブロッホで定住するよう、女性でつなぎとめようとしたわけです。ジェニーはジェイミーに、自分から離れないで欲しかったのです。ジェイミーが精神的にも疲弊してくると、「再婚しなさいよキャンペーン」は実を結びます。
「ジェニーはやさしく、かつ執拗に、彼に再婚を勧めた。…中略…だが、彼は相手にしなかった。だが、それまで彼を支えてきた故郷への思いを失うと、無性に誰かと結びつきたかったーーだから、姉の話に耳を貸すようになった。(「時の彼方の再会 2」より)」
得体のしれないクレアは恐れられていた
クレアが18世紀に戻ってくると、ジェニーは亡霊を見たような表情をします。ジェイミーとリアリーの結婚式で、二人の間に立つクレアの亡霊(?)を見たからです。「…あんまり恐ろしくて、結婚の誓いの最中に席をはずしたくらい。」だとジェニーは言いました。
また、クレアは未来から来たので、ジェニーたちにとったら魔女のように思えたのでしょう。飢饉を予言しジャガイモを植えよと教え、地下室(司祭隠し)を増設し、イングランド軍から財産を守ることができました。でも、どこから来たのか、どんな親戚がいるのか、誰も知らないのです。
クレアに得体の知れない恐ろしさを感じている事も、ジェイミーを連れていかせたくない理由であり、リアリーに限定しなくても再婚を強くすすめた理由でもあったと思います。
リアリーよりもジェニーのほうが手強かった
クレアが生きていたこと、再会できたこと自体はジェニーも喜んだのでしょう。しかし、ジェニーに意地悪な気持ちがなかったとは、私は思いません。ここは強く主張したいところです。
クレアが18世紀のラリー・ブロッホに戻ったときに、ものすごく上手く追い払ったからです。
「…リアリーとちがって、あなたはここに縛りつけられていないーーわたしとちがって。そしたら、彼も一緒に行ってしまう。そうしたら、二度と彼には会えない」「だからよ。あなたはリアリーのことを知っているから、もし結婚のことがわかれば、あなたはすぐさま出ていくだろうと思ったの(以下略)」
クレアには情報をすべて開示せずに、誤解させて出て行かせます。すでにリアリーはジェイミーと別居し、ラリー・ブロッホからも離れていたということは教えませんでした。馬や食料などを持たせて出て行く支度を手伝いさえしました。理由がどうあれ、そういうやり方って、どうなの!?その前に話す事があったと思います。
しかし、クレアはすぐに戻ります。ヤング・イアンが連れ戻します。ジェイミーがリアリーに銃で撃たれたので(天罰か?)。
ジェイミーとクレアの強い結びつきを再確認すると、ついにジェニーはジェイミーをとどまらせることをあきらめます。そうすると、ジェイミーの面倒を見てくれるようクレアに頼み、リアリーとの結婚を無効とする取り決めでも、積極的に助けてくれました。リアリーへの金銭的な補償は、リアリーが再婚するまでだよと言ってくれたのはジェニーです。そして「リアリーを早く再婚させなくちゃ」と実力を発揮しそうな勢いを見せるところが、ちょっと可笑しかった。
リアリーとの結婚でジェイミーが得たもの
ジェイミーがフランスで雇ったファーガスは養子となって、大人になるまでジェイミーとともにいます。ファーガスは、マーサリという女性と結婚し、子供を持ちます。このマーサリこそ、リアリーの娘のひとりです。マーサリは、ジェイミーの養女となり、はじめはクレアと感情的な確執がありつつも、すぐにクレアを母と認め、家族になります。マーサリももう一人の娘も、ジェイミーには後ろ盾になる義務があり、とくに嫁入りのときには持参金を負担しなければなりません。
ドラマ「アウトランダー シーズン3」では、原作と同じようにファーガスとマーサリが結婚するのでしょうか。
マーサリは、クレア、ブリアナと共に、家族を守る強い女性として成長します。とんでもなく近い人間が裏切りまくるなか、ジェイミーとクレアが心から信頼できる家族になります。のちにマーサリは、銃を構えてアライグマを撃つくらいに強くなります。それはシーズン4か5くらいでしょうか。
リアリーとの結婚で、ジェイミーはマーサリを手に入れます。ブリアナのように派手ではないけれど、苦労にも負けずにしっかりとファーガスを支える女性です。
ドラマのシーズン3が楽しみです。